今やカメラ界のリーディングカンパニーとなり、フルサイズミラーレスの代名詞となったソニーの「α7」シリーズ。
しかし、ソニーがコニカミノルタからカメラ事業を引き継ぎ、世界を牽引する存在になるまでの約10年間、ソニーは伝統の「一眼レフ市場」でキヤノン・ニコンの圧倒的な牙城を前に、凄まじい苦闘を続けていました。
当時は「家電屋のカメラ」と揶揄されることもありましたが、実はこのミラーレス前夜のAマウント時代にこそ、ソニーの技術者たちの「意地と飽くなき挑戦」から生まれた、常識破りのイノベーションが詰まっていました。
今回は、現在のミラーレス全盛期だからこそ、その圧倒的な個性とロマンで再評価されている「ソニー製一眼カメラ」の傑作たちにスポットを当ててご紹介します。
一眼レフ時代のソニーがぶつかった「センサー以外の高い壁」
2006年にカメラ事業へ参入したソニーは、自社の強みである世界最高峰のイメージセンサーを武器に戦いを挑みました。しかし、カメラはセンサーだけで作れるものではありません。
キヤノン・ニコンには、何十年もかけて築いた「400mm F2.8」などのプロ用超望遠レンズ群や、オリンピック会場でも即座に修理対応できる完璧なサポート体制、そして過酷な現場で鍛え上げられた動体捕捉AFのノウハウがありました。
「正面突破の一眼レフ構造では、この歴史の差を埋めるのに何十年かかるか分からない」と痛感したからこそ、ソニーは独自の技術でカメラの構造そのものを変える大博打に出ます。その試行錯誤の歴史から生まれたカメラたちが、今になってカメラマニアの間で「エモすぎる名機」として熱狂的に再評価されているのです。
いま再評価される!ソニーAマウントの「奇跡の名機」おすすめ3選
1. 唯一無二の「ミノルタの魂」が宿る孤高の傑作:α900(2008年)
ソニーが初めて世に送り出した、フルサイズ一眼レフのフラッグシップ機です。このカメラの最大の価値は、ソニーがこれ以降電子ファインダー(EVF)へ移行したため、「ソニー史上、最初で最後のフルサイズ光学ファインダー(OVF)搭載機」になった点にあります。
ミノルタから引き継いだ職人技のガラスペンタプリズムを採用したファインダーは、「吸い込まれるように明るく、ピントの山が見極めやすい」と今でも絶賛されるほどの官能的な心地よさを持っています。
また、動画機能やライブビューを一切排除し、静止画の画質だけに特化した約2460万画素センサーは、現在のカリカリにシャープなデジタル絵とは違い、まるで上質なフィルム映画のような空気感や色気のある写真が撮れると、オールドデジカメ界隈で神格化されています。
Sony α900 DSLR-A900

2. 「未来の当たり前」を先取りしすぎた革新機:α55(2010年)
「普通の一眼レフの構造では勝てない」と確信したソニーが、世界を驚かせたターニングポイントとなった1台です。
最大の特徴は、独自の「トランスルーセントミラー・テクノロジー(TMT)」です。シャッターを切るたびに鏡がガシャガシャ上下する普通の一眼レフとは違い、光を透過する固定されたマジックミラーを配置しました。レンズから入った光を「ピント合わせセンサー(30%)」と「イメージセンサー(70%)」に常時分配するため、秒間10コマの超高速連写中も完全にリアルタイムでピントを合わせ続けることが可能になり、画面が真っ暗になるブラックアウトも克服しました。
現在のミラーレスカメラが当たり前にやっている「画面を見ながら爆速AFで連写する」という動きを、15年以上前に一眼レフの形で予言していた、ソニーの先見の明の結晶と言えます。

Sony α55 SLT-A55V

3. Aマウント最終章にして究極のモンスター:α99 II(2016年)
時代がすでにミラーレス(α7シリーズ)へ完全移行しつつある中、ソニーが「Aマウントの資産を見捨てない」と、当時の最新技術をこれでもかとド根性で詰め込んだ、事実上のAマウント最終フラッグシップ機です。
その中身は、当時大ヒットしたミラーレス「α7R II」と同等の約4240万画素・裏面照射型フルサイズセンサーを搭載した、まさにミラーレスの頭脳を持つ一眼レフでした。
フィルム時代から続く往年の名作「ミノルタAマウントレンズ」を、ボディ内手ブレ補正と、一眼レフAF×像面位相差AFを同時に駆動させる超絶ギミックで振り回せるため、かつてのミノルタの遺産を100%活かせる究極の母艦として、現在マニアの間で中古価格が高騰している垂涎の的です。
Sony α99 II ILCA-99M2

まとめ:レンズ選びの注意点とAマウントのロマン
これらのカメラを楽しむ上で、1点だけ重要な注意点があります。
現在主流となっているミラーレス用の「Eマウントレンズ」を、これらのAマウントカメラに取り付けるアダプターは存在しません(物理的な構造上、作ることができません)。そのため、これらのカメラで撮影を楽しむ場合は、ミノルタ時代から続く豊富な「Aマウント用レンズ」の中からお気に入りの1本を探して組み合わせることになります。
今なお多くの写真家を惹きつけてやまない、Aマウントならではの魅力を堪能できるおすすめのレンズを3本ご紹介します。
Aマウントの魅力を引き出す傑作レンズたち
まず試していただきたいのが、ミノルタ時代の遺伝子を最も色濃く、かつ手軽に体感できる「MINOLTA AF 50mm F1.4」です。ミノルタ伝統の「柔らかいボケ味」と、人の肌を美しく見せる暖かみのある独特の色合い(通称ミノルタカラー)を驚くほど安価に楽しむことができ、スナップ撮影の楽しさを再発見させてくれます。
ポートレート(人物撮影)にこだわりたい方には、ソニーと名門ツァイスの協業が生んだ至宝「Planar T* 85mm F1.4 ZA」が外せません。ピントが合った部分のシャープさと、そこからなだらかに溶けていく美しいボケ味、そして光を吸い込むような透明感のある描写は、現行の最新レンズにはない「写真としての絵作り」の深さを教えてくれます。
そして、Aマウント最高峰の神レンズとして今も伝説的に語り継がれるのが「Sonnar T* 135mm F1.8 ZA」です。135mmという中望遠でありながらF1.8という驚異的な明るさを誇り、ファインダーを覗いた瞬間に息をのむほどの解像力と、被写体が背景から立体的に浮き上がってくるような唯一無二の表現力を持っています。
かつてキヤノン・ニコンに真摯に挑みながらも、「どうにかして新しい価値を作ろう」と熱い挑戦を続けていた一眼時代のソニー。あの頃の果敢な試行錯誤があったからこそ、現在のα7の大逆転劇へと繋がっています。
今、あえてミラーレス全盛の時代に、この「ミラーレス前夜のロマン」が詰まったAマウントの傑作たちを手に、カメラの歴史の深みに浸ってみるのはいかがでしょうか?


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