2026年9月9日、OM SYSTEMから新型ミラーレスカメラ「PEN」が正式発表されました。事前ティザーでは歴代シリーズを彷彿とさせるデザインが話題を呼びましたが、公開されたスペックを見ると、単なるE-P7の後継機とは明らかに一線を画しています。
最大の進化は、従来の「小さく気軽なスナップ機」から、本格的な撮影をこなす「中級万能機」へとシフトした点です。
EVFの内蔵や像面位相差AF、防塵・防滴構造の採用に加え、ライブNDやハイレゾショット、深度合成といった上位機ゆずりの機能まで凝縮されています。
そのこだわりは、外観の細部にも現れています。
ボディ正面は「OM SYSTEM」ロゴを右肩へ配し、あえて「PEN」の刻印を独立させた印象的なレイアウトを採用。
型番(E-P8など)を付けず、シンプルな「PEN」という名で登場したことからも、このブランドを再定義しようとする強い意図が感じられます。
はたして前モデルE-P7から何が変わり、同社の中堅機「OM-5 Mark II」や2026年春に登場した「LUMIX L10」とどう違うのか。気になるその中身を、詳しく探っていきましょう。
E-P7から最大の進化は「何でも撮れるPEN」になったこと
E-P7は約2030万画素の4/3型Live MOSセンサーと5軸手ぶれ補正を搭載した小型ミラーレスでしたが、AFは121点のコントラストAFでした。新型PENでは約2037万画素センサーに加え、121点オールクロス像面位相差AFとコントラストAFを併用する方式へ変更されています。
さらに人物だけでなく犬や猫にも対応するAI被写体認識AFを搭載し、星空AFやAFリミッター、C-AF追従感度の調整にも対応しました。E-P7が日常の静物やスナップを気軽に撮る性格だったのに対し、新型PENでは人物やペット、動く被写体まで撮影対象が大きく広がっています。
撮影機能も大幅に強化されました。ライブNDはND2~ND16、手持ちハイレゾショットは約5000万画素に対応し、深度合成やプロキャプチャーも利用できます。これまで上位のOMシリーズを選ぶ理由になっていた機能がPENにも入り、「PENだから撮れない」という場面がかなり減りました。
OLYMPUS PEN E-P7

E-P7より大きくなったのは事実。しかし理由のあるサイズアップ
一方で、E-P7から乗り換える際に気になるのがサイズです。E-P7は118.3×68.5×38.1mm、バッテリーとカード込み337gでしたが、新型PENは125.8×74.5×43.3mm、393g。幅は7.5mm、高さは6mm、奥行きは5.2mm増え、重量も56g増加しています。
ただし、このサイズアップには明確な理由があります。新型PENには約236万ドットのOLED電子ビューファインダーが内蔵され、PENシリーズとして初めて防塵・防滴にも対応しました。液晶もE-P7のチルト式からスイバル式へ変わり、USB Type-Cや外部マイク入力なども備えています。
手ぶれ補正は中央5.5段、周辺4.5段とされています。ただし新型PENはCIPA2024規格で測定されているため、旧規格で4.5段とされたE-P7と数字だけを直接比べるのは適切ではありません。それでも機能全体を見ると、小ささを最優先するより、持ち歩ける大きさを維持しながら撮影能力を大幅に高める方向へ設計思想を変えたことが分かります。
一方、実際の操作性で個人的に気になっているのが、背面のCPボタンの位置です。CPボタンはサムグリップのすぐ横に配置されており、カメラを握った際に親指が触れやすそうに見えます。筆者は以前、FUJIFILM X-T30 IIIで似た位置にあるQボタンを意図せず押してしまうことが多く、最終的に手放した経験があります。もちろん新型PENでも同じことが起こるとは限りませんが、このボタン配置だけはスペック表では判断できないため、実機を手にして確かめてみたいポイントです。
| 項目 | E-P7 | 新型OM SYSTEM PEN |
|---|---|---|
| 外形寸法 | 118.3×68.5×38.1mm | 125.8×74.5×43.3mm |
| 重量(電池・カード含む) | 337g | 393g |
| EVF | 非搭載 | 約236万ドットOLED |
| AF | 121点コントラストAF | 121点クロスタイプ像面位相差AF+121点コントラストAF |
| 手ぶれ補正 | 5軸・4.5段 ※旧基準 | 5軸・中央5.5段/周辺4.5段 ※CIPA2024 |
| 液晶 | チルト式 | スイバル式(バリアングル) |
| USB端子 | Micro USB | USB Type-C |
| 外部マイク入力 | 非対応 | 対応 |
| 防滴性能 | なし | 対応 |
OM-5 Mark IIとは上下ではなく「性格の違う中級機」
新型PENの仕様で興味深いのは、OM-5 Mark IIとの距離が非常に近いことです。両機とも約2037万画素センサーと121点オールクロス像面位相差AFを採用し、ライブND、ハイレゾショット、深度合成、プロキャプチャーなどにも対応します。もはやPENを単純な下位モデルとは呼びにくい構成です。
もちろんOM-5 Mark IIのほうが本格撮影向けの余裕はあります。手ぶれ補正はCIPA2024基準で中央6.5段、周辺5.5段と強く、対応レンズとの5軸シンクロISにも対応。防塵・防滴はIP53、使用可能温度も-10℃までで、1/8000秒のメカシャッターやUHS-II対応SDカードなど、アウトドアや連写を意識した仕様になっています。
新型PENはそこを競うのではなく、393gという軽さと低いボディ形状を生かしながら、カラー/モノクロプロファイルによる写真表現を前面に出しています。OM-5 Mark IIが山や自然へ持ち出す万能機なら、PENは街や旅行、家族、ペットを日常的に撮る万能機という棲み分けが見えてきます。
| 項目 | 新型OM SYSTEM PEN | OM-5 Mark II |
|---|---|---|
| 有効画素数 | 約2037万画素 | 約2037万画素 |
| AF | 121点クロスタイプ像面位相差AF+121点コントラストAF | 121点クロスタイプ像面位相差AF+121点コントラストAF |
| AI被写体認識 | 人物・犬・猫 | 顔・瞳優先AF |
| ライブND | ND2~ND16 | ND2~ND16 |
| 手持ちハイレゾ | 約5000万画素 | 約5000万画素 |
| 深度合成 | 対応 | 対応 |
| プロキャプチャー | 対応・最高30コマ/秒 | 対応・最高30コマ/秒 |
| 手ぶれ補正 | 中央5.5段/周辺4.5段 | 中央6.5段/周辺5.5段 |
| 5軸シンクロIS | 非対応 | 対応 |
| 防塵・防滴 | IPX1 | IP53 |
| 耐低温 | 0℃~ | -10℃~ |
| メカシャッター最高速 | 1/4000秒 | 1/8000秒 |
| SDカード | UHS-I | UHS-II |
| 重量 | 393g | 418g |
| 得意な方向性 | スナップ、旅行、家族、ペット、写真表現 | アウトドア、自然、望遠、悪天候、連写 |
OM SYSTEM OM-5 Mark II

LUMIX L10と比べると新PENの大きさがよく分かる
2026年春に登場したパナソニックのLUMIX L10と比べるのも興味深いところです。L10は127.1×73.9×66.9mmなので、新型PENの125.8×74.5mmという正面サイズとはほぼ同じです。つまり新PENは、レンズ一体型の高級コンパクトと並べても違和感のないサイズに収まっています。
ただしL10は24-75mm相当F1.7-2.8の明るいズームレンズを内蔵して約508gです。新型PENはボディだけなら393gですが、125gのM.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 IIIを装着すると約518gとなり、重量はほぼ同等になります。
ここには両機の考え方の違いがよく表れています。L10はレンズ交換を不要にして508gですべてを完結させるカメラ、新PENはレンズ交換式を維持しながら、小型単焦点から望遠、マクロまで自由にシステムを広げられるカメラです。2026年に4/3型センサーを使った二つの小型高性能機が登場したこと自体、非常に興味深い動きです。
Panasonic LUMIX DC-L10

まとめ:新型PENはE-P7後継というより中級万能機への再出発
E-P7の軽さを何より重視していたユーザーにとって、337gから393gへの重量増やボディの大型化は気になるところでしょう。内蔵フラッシュがなくなり、SDカードもE-P7のUHS-II対応からUHS-I対応へ変わっているため、すべての面で単純な上位互換になったわけではありません。
しかし、EVFや像面位相差AF、防塵・防滴、AI被写体認識、ライブND、ハイレゾショット、深度合成、プロキャプチャーまで一台にまとめたことで、PENの用途は以前とは比較にならないほど広がりました。OM-5 Mark IIほどの耐環境性能や連写性能を必要としない一方、デザインだけでなく撮影性能にも妥協したくない人には、非常に魅力的な選択肢になっています。
さらに今回は、PENと同時に標準ズーム「M.ZUIKO DIGITAL 14-42mm F3.5-5.6 III」も新しくなりました。28-84mm相当の使いやすい焦点域と125gの軽さを維持しながら、IPX1の防塵・防滴に対応。広角端では最短13cmまで寄ることができ、35mm判換算で最大0.53倍相当の近接撮影にも対応するため、風景やスナップだけでなく料理や花、小物なども一つのレンズで撮影できます。PENとの組み合わせでも約518gに収まり、ボディとレンズを合わせて「日常から旅行まで一台でこなす」という今回のPENの方向性に合わせた標準ズームと言えるでしょう。
E-P7もPENシリーズの中で高機能なモデルでしたが、今回の新型PENはEVFや全天候性能を備え、あらゆる環境で撮影に没頭できる「本格スナップシューター」へと深化を遂げた点が大きく異なります。
ボディだけでなく標準ズームまで同時に防滴化して刷新したことからも、OM SYSTEMが今回のPENを単なる後継機ではなく、新しいPENシステムの出発点として位置付けていることがうかがえます。
軽快さと写真表現の楽しさはそのままに、よりシビアな撮影環境にも応える道具を求めていた人にとって、2026年の新型PENはこれまでのPEN以上に響く一台になるはずです。

コメント