2025年に発売されたNikon Z5IIは、最新の画像処理エンジン「EXPEED 7」を搭載し、従来は上位機種を中心に採用されていた機能を取り入れたフルサイズミラーレスです。
発売後は「価格以上の完成度」「フルサイズ入門機とは思えない性能」といった評価が目立ち、ニコンの現行ラインアップの中でも人気モデルとなりました。
その一方で、D750やD780といった一眼レフから乗り換えたユーザーの間では、「画質や通常撮影には満足しているが、動体撮影だけは一眼レフの方が自然だった」という声も少なくありません。
この評価は、AF性能そのものが低いという単純な話ではなく、EVF(電子ビューファインダー)の表示方法やミラーレス特有の撮影スタイルが大きく関係しています。そして興味深いことに、使い始めた当初と数か月後では評価が変わったというケースも多く見られます。
今回は、Z5IIを巡るさまざまな評価を整理しながら、一眼レフからミラーレスへ移行する際に感じる違いや、それぞれのカメラが得意とする撮影スタイルについて考えてみます。
最初に感じる「壁」はAFではなくEVFだった
一眼レフからZ5IIへ乗り換えた人が最初に戸惑うのは、AF性能ではなくEVFの見え方です。
D750やD780では、レンズを通った光をそのまま見る光学ファインダーを採用しているため、表示遅延という概念がありません。野鳥や飛行機のような高速で動く被写体でも、見たままを自然に追い続けることができます。
一方、Z5IIでは撮像センサーが取り込んだ映像を画像処理し、それをEVFへ表示します。そのため、高速で動く被写体では光学ファインダーとは異なる感覚になります。特に連写を開始した直後やブラックアウトから表示が戻る瞬間に違和感を覚えたという声が見られます。
ただし、ここで誤解してはいけないのは、これはZ5IIだけの問題ではないということです。
Z5IIは最新のEXPEED 7を搭載していますが、積層型CMOSセンサーではありません。EVFの表示感覚は、センサーの読み出し速度にも左右されるため、多くの非積層センサー機では似た傾向があります。つまり、「画像処理エンジンが遅い」のではなく、EVFという仕組みそのものの特性が影響しているのです。
Nikon ニコン Z5II

初代Z5からは大きく進化した。しかし上位機との差も残る
Z5IIの動体撮影についてはさまざまな意見がありますが、一つ確かなのは、初代Z5からは大きく進化したという点です。
最大の変化は、画像処理エンジンが最新の「EXPEED 7」へ刷新されたことです。これにより、被写体認識AFの精度をはじめ、AFの追従性能や演算速度が向上し、人物や動物を撮影する際の使い勝手は大幅に改善されました。初代Z5を使っていたユーザーからは、「AFが別物になった」「撮影のテンポが良くなった」と評価する声も多く、日常撮影では確かな進化を実感できるでしょう。
一方で、EVFについては「初代より快適になった」という評価が多いものの、高速な被写体を追う撮影では、光学ファインダーほどリアルタイムに見えるわけではありません。連写中の表示やブラックアウトの感じ方には違いがあり、これは画像処理エンジンではなく、センサーの読み出し速度やEVFの表示方式による影響が大きいと考えられます。
この弱点を大きく改善しているのが、上位機種のZ8やZ9です。
両機は積層型CMOSセンサーを採用しており、通常の裏面照射型CMOSと比べて読み出し速度が大幅に向上しています。そのため、EVFの表示遅延やブラックアウトが大きく抑えられ、高速連写中でも被写体を追いやすくなっています。光学ファインダーに匹敵するとは言えないまでも、動体撮影時の違和感は大きく軽減されており、多くのユーザーが「一眼レフに近い撮影感覚」と評価しています。
AFは「性能」よりも「付き合い方」で印象が変わる
発売直後には、「野鳥では思ったほどAFが食い付かない」「人物瞳AFが眼鏡やまつ毛へ反応してしまうことがある」といった声もあり、一眼レフから乗り換えた直後は期待とのギャップを感じたユーザーも少なくありませんでした。
しかし、その後も撮影を続ける中で評価は少しずつ変化していきます。
例えば人物撮影では、オートエリアAFや3DトラッキングよりもシングルポイントAFの方が狙った位置へ確実に合わせやすいという意見が増えました。また、電子先幕シャッターを使用することでAFの安定性やEVF表示が改善したと感じるユーザーもいます。
さらに、「ピントが甘い」と思っていた写真をRAW現像ソフトで確認したところ、実際には問題なく合焦しており、画像表示ソフトの見え方が原因だったというケースもありました。
こうした検証を重ねた結果、「期待外れだった」という評価から、「設定や撮影方法を理解すると本来の性能を発揮するカメラだった」という評価へ変わっていったユーザーは少なくありません。
つまり、Z5IIは誰でも同じように使える万能なカメラというより、ミラーレスならではの特性を理解することで実力を発揮するカメラと言えるでしょう。
それでも動体撮影では一眼レフに分がある場面も
こうした検証を通じて、AF性能そのものに対する評価は大きく改善しました。しかし、それでも一眼レフとミラーレスの違いが完全になくなったわけではありません。
D750やD780の光学ファインダーは、現在でも高速な被写体を追う撮影では大きなアドバンテージがあります。被写体を表示遅延がなくリアルタイムで見続けられるため、野鳥や飛行機、モータースポーツなどでは「安心して追える」と感じるユーザーが多いのも事実です。
中古価格が手頃になったD750は、画質も十分実用的で、豊富なFマウントレンズを比較的安価に揃えられることも魅力です。動体撮影を重視する人や、光学ファインダーならではの撮影感覚を好む人にとっては、現在でも十分に価値のある選択肢と言えるでしょう。
Nikon ニコン D750

Nikon ニコン D780

Z5IIには一眼レフにはない撮影サポート機能がある
一方で、Z5IIには一眼レフにはない強みもあります。その代表がプリキャプチャーです。
プリキャプチャーは、シャッターボタンを半押ししている間から画像を記録し、全押しした瞬間だけでなく、その最大1秒前までのコマを保存できる機能です。
例えば、鳥が枝から飛び立つ瞬間や、犬がジャンプする瞬間などは、動きを見てからシャッターを押したのでは、わずかにタイミングが遅れてしまうことがあります。プリキャプチャーを使えば、人間の反応速度だけでは合わせにくい一瞬を残せる可能性があります。
これは、撮像センサーが常に映像を読み取り続けるミラーレスの構造を活かした機能です。一眼レフのように光学ファインダーで被写体を追い続ける撮影感覚とは異なりますが、その代わりにカメラ側が撮影者をサポートし、難しいタイミングの撮影成功率を高めてくれます。
さらにZ5IIでは、EXPEED 7による被写体認識AFや人物・動物などを検出するAF機能、ボディ内5軸手ブレ補正など、撮影をサポートする機能も充実しています。
特に日常撮影や家族写真、ペット撮影では、撮影者の技術だけに頼るのではなく、カメラの性能を活用して安定した結果を得やすい点が大きな魅力です。
つまり、Z5IIは一眼レフの撮影感覚をそのまま置き換えるカメラではありません。しかし、撮影者の反応速度や経験だけでは難しい場面を、最新のAFや撮影支援機能によって補える、現代的なフルサイズミラーレスと言えるでしょう。
FマウントレンズはFTZ IIで十分活かせる
一眼レフからZ5IIへ移行する際に、多くのユーザーが気にするのがFマウントレンズ資産をそのまま活用できるかという点です。
その点では、純正のFTZ IIマウントアダプターの完成度は高く、多くのAF-SレンズやEタイプレンズでAFやAE、ボディ内5軸手ブレ補正を快適に利用できます。
価格も比較的手頃なことから、FマウントレンズをZボディで使用するユーザーの多くはFTZ IIを選んでいます。
電子接点付きのサードパーティー製アダプターも販売されていますが、こちらを選ぶユーザーは少数派です。というのも、価格面で純正FTZ IIより大きなメリットがあるとは限らず、製品によってはむしろ高価なものもあります。
一方で、コンパクトなデザインやボディとの一体感、特定レンズへの対応など、純正とは異なる特徴に魅力を感じて選ばれるケースもあります。ただし、AFやAEの互換性、動作の安定性、将来的なファームウェア更新への対応まで考えると、純正FTZ IIならではの安心感を重視するユーザーが多いのも事実です。
こうした純正への安心感が重視される背景には、ニコンとサードパーティーメーカーの関係もあります。Fマウント時代は通信仕様が公開されていなかったため、新しいボディやファームウェア更新への対応で互換性が問題になるケースもありました。
現在のZマウントでは、シグマやタムロンなどライセンスを受けたメーカーの参入によって選択肢は広がっていますが、互換性や長期的なサポートを重視するユーザーからは、純正を選ぶ安心感が今も支持されています。
そのため、Fマウントレンズ資産を活かしながらZ5IIへ移行したいユーザーにとって、FTZ IIは安心して選べる定番のアダプターと言えます。
まとめ:Z5IIは「万能機」ではなく、進化した実用派フルサイズ
Z5IIは、フルサイズミラーレスとして高い完成度を持ちながら、価格を抑えたバランス型のカメラです。特に人物撮影、旅行、風景、ペット撮影などでは、EXPEED 7による高速AFや被写体認識、優れた高感度性能によって、多くのユーザーが満足できる性能を備えています。
一方で、野鳥や飛行機など、常に高速で動く被写体を追い続ける撮影では、Z8やZ9のような上位機種、あるいはD750やD780のような光学ファインダー搭載機が向いている場面もあります。
そのため、Z5IIは「一眼レフを完全に置き換えるカメラ」ではなく、ミラーレスのメリットを活かしながら、Fマウント資産も活用できる現実的な移行先と言えるでしょう。
逆に、野鳥や航空機撮影を最優先し、ファインダー越しの追いやすさを何より重視するなら、D780やZ8/Z9といった別の選択肢も検討する価値があります。
Z5IIの魅力は、「何でも最高にこなすカメラ」ではなく、価格・性能・レンズ資産のバランスに優れた、現代的なフルサイズミラーレスである点にあります。


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