MTF曲線チャートの見方について/おすすめレンズは?

M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8のMTFチャート レンズ

MTF曲線とは?

レンズの製品ページには、「MTF曲線」と呼ばれるチャートが掲載されています。
このMTF(Modulation Transfer Function)曲線とは、レンズのコントラスト解像度を数値化し、視覚的に示したものです。

MTF曲線の基本的な見方を理解しておくと、レンズを選ぶ際の良い参考になります。

MTF曲線が示すもの(マイクロフォーサーズセンサーの場合)

ここでは、マイクロフォーサーズ(MFT)用のズームレンズのMTF曲線を例に説明します。

LEICA DG 35-100 F2.8ズームレンズのMTFチャート

横軸の意味

MTF曲線の横軸には「5、10、15」などの数字が並んでおり、これはセンサーの中心からの距離(mm)を表しています。

例えば、マイクロフォーサーズセンサー(17.3×13mm)の対角線の長さは約21.6mmです。
センサーの中心からの距離は、その半分にあたる約10.8mmになります。

この数値は、MTF曲線の横軸の最大値(約10~12mm)とほぼ同じであるため、グラフの横軸を見ることでレンズの描写性能がセンサーのどの部分でどのように変化するかを確認できるのです。

他のフォーマットとの比較

  • フルサイズセンサー(36×24mm):対角線は約43.27mm(中心から21.6mm
  • APS-Cセンサー(23.5×15.6mm, Nikonの場合):対角線は約28.4mm(中心から14.2mm
  • マイクロフォーサーズセンサー(17.3×13mm):対角線は約21.6mm(中心から10.8mm

マイクロフォーサーズのレンズ設計では、フルサイズやAPS-Cと比較してセンサーのサイズが小さいため、MTF曲線の横軸の数値も小さくなります
これは、画像の周辺部に至る距離が短いためです。

縦軸の意味

縦軸は、レンズのコントラストを示し、最大値は100(%)です。

この数値は、どれだけ鮮明に被写体のディテールを再現できるかを表しています。
100に近いほどコントラストが高く、シャープな描写が可能になりますが、レンズの設計や収差の影響により、画面の端に向かうほど値が低下することが一般的です。

また、MTF曲線では異なる空間周波数(例:20本/mmや40本/mm)で測定されます。

  • 水色の線(20本/mm):はコントラストを示し、100に近いほど「ヌケが良く」、メリハリのある描写が得られます。
  • 緑の線(40本/mm)解像度を示し、高いほど細部までシャープに描写でき、微細な模様や文字の再現性が向上します。

つまり、水色の線も緑の線も縦軸の100に近ければ近いほど、より優れた描写ができるレンズであると言えます。

実線と点線の意味

  • 実線:放射方向(Sagittal)… レンズの中心から外側へ向かう直線的な方向のコントラスト変化。
  • 点線:同心円方向(Meridional/Tangential)… レンズの中心を基準に円周方向に沿ったコントラスト変化。

写真は小さな光の点(焦点)の集まりによって形成されます。本来、焦点がセンサー上で完全な円形であれば、放射方向と同心円方向のコントラストは一致するはずです。

しかし、非点収差(ぐるぐるボケ、同心円方向のボケ)やコマ収差(放射方向のにじみ)の影響により、焦点の形が楕円状に変形するため、放射方向と同心円方向で異なる傾向を示します。
そのため、MTF曲線では両方のデータを示しているのです。

なお、実線と点線の乖離が少ないほど、ボケが綺麗なレンズである傾向が強いとされています。

水色の線と緑の線には、それぞれ実線(末尾にSが付いているライン)と点線(末尾にMが付いているライン)の2種類があり、これは異なる方向のコントラストの変化を示しています。

  • 実線(放射方向、Sagittal):レンズの中心から外側へ向かう直線的な方向のコントラスト変化。
  • 点線(同心円方向、Meridional/Tangential):レンズの中心を基準に円周方向に沿ったコントラスト変化。

写真は、無数の光の点の集まりにより形成されます。理想的な状態では、焦点はセンサー上で完全な円形になり、放射方向と同心円方向のコントラストは同じになるはずです。

しかし、非点収差(ボケの方向が揃わず、ぐるぐるボケや同心円方向のボケが発生)やコマ収差(光のにじみが放射方向に伸びる)があると、焦点の形が楕円形に変形し、放射方向と同心円方向で異なるコントラスト特性を示します。
そのため、MTF曲線では両方のデータを示すことで、レンズの描写特性をより詳細に分析できるようになっています。

つまり、実線と点線の乖離が少ないほど、放射方向と同心円方向の描写が均一で、ボケが自然で美しいレンズである傾向が強いとされています。

ボケがきれいなMTFチャートの例

以下のMTFチャートは、ボケがきれいと評判のOMシステムズの「M.ZUIKO DIGITAL ED 75mm F1.8」のものです。

高周波(60本/mm)、低周波(20本/mm)ともに実線と点線の乖離が少なくセンサー中心(横軸の左端)からセンサの外周(横軸の右端)までなだらかな曲線を描いていることが分かります。

※OMシステムズのMTFチャートの高周波は60本/mmが使われています。Panasonicは(40本/mm)が使われているので、比較する際は注意が必要です。

MTF曲線で一般的に使われるF値

メーカーが公開しているMTF曲線は、ほとんどの場合、レンズの開放F値(最も絞りを開いた状態)で測定されたデータのみが掲載されています。

一般的に、レンズは絞りを絞る(F値を大きくする)と、光学収差が抑えられ、MTF曲線の値も向上します。
これは、特に球面収差や非点収差
が低減することで、コントラストや解像度が改善されるためです。

そのため、異なる開放F値を持つレンズ同士をMTF曲線で比較する際には注意が必要です。
例えば、F1.4のレンズとF2.8のレンズの開放値でのMTFを単純に比較すると、F1.4のレンズの方が不利に見えることがあります。
しかし、F1.4のレンズもF2.8まで絞ればMTFの値が向上すると考えられます。

理想的なMTF曲線は?

レンズ選びの際、MTF曲線を比較すると、それぞれのレンズの特性を理解しやすくなります。
コントラストやシャープな描写を求める場合は、低周波(20本/mm)高周波(40本/mm)のMTF値が高いレンズが適しており、ボケの自然さを重視するなら、放射方向(実線)と同心円方向(点線)の差が少ないレンズが理想的です。

ただし、MTF曲線だけでは上記特性以外のボケ味や色収差、逆光耐性などは分からないため、作例や実写レビューも確認することが大切です。
MTFはあくまで参考の一つとし、用途や撮影環境に合わせて総合的に判断する必要があります。

まとめ

  • MTF曲線は、レンズのコントラストと解像度を数値化したグラフ。
  • 横軸はセンサー中心からの距離(mm)、縦軸はコントラスト(最大値100)。
  • 水色の線(20本/mm)はコントラスト、緑の線(40本/mm)は解像度を示す。
  • 実線は放射方向、点線は同心円方向のコントラスト変化を示す。
  • 実線と点線の差が小さいほど、ボケが綺麗な傾向がある。
  • MTF曲線は通常、開放F値でのデータが掲載される。開放F値の異なるレンズ同士の比較には注意が必要。
  • MTF曲線はコントラストや解像度の指標にはなりますが、ボケの質、色収差、逆光耐性、フレア・ゴーストの発生、歪曲収差、立体感などは分かりません。作例やレビューを併せて確認し、総合的に判断することが重要です。

今回の記事を作成するにあたり、さまざまなMTFチャートを調べたところ、パナソニックの「LUMIX G 45-150mm F4.0-5.6」は、解像度・コントラストともに優れた性能を持つと判断できそうです

実売価格が約2万円と手頃で、MTF曲線の数値を見る限り、シャープな描写と高いコントラストが期待できるレンズです。
コンパクトで扱いやすい望遠ズームでありながら、描写性能にも優れているため、コストパフォーマンスの高さを考えると、非常に気になる一本ですね。

 

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